家を新築するとき、または購入するときには、各自治体が用意している補助金制度を利用することで、住宅取得に係る費用を抑えられます。しかし、補助金制度が利用できることを知らずに住宅を取得してしまうと、本来受け取れるはずであった金額を得られず、大きく損することになるかもしれません。
制度の利用にはさまざまな条件が定められており、すべての制度を調べるのは時間と手間がかかります。この記事を読むことで、補助金を受けるための条件や、どのような補助金があるのかがわかり、住宅取得時にかかる費用を抑えられるでしょう。
目次
大阪府:大阪市新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度
補助金制度
これから一戸建てを建てたい、新築したいという方に向けて、住宅取得時に利用できる補助金制度の概要をまとめています。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯が、省エネ性能の高い新築住宅を取得したり、省エネ改修をしたりするための費用を支援する制度です。
補助の対象となるのは、具体的には下記のとおりです。
- 子育て世帯や若者夫婦世帯の、高い省エネ性能を有する注文住宅の新築や、新築分譲住宅の購入
- 世帯を問わず対象工事を実施するリフォーム
制度を利用するための申請は、住宅の販売やリフォームを行う事業者が申請を行います。住宅を購入したり、リフォームを依頼したりする一般消費者からの申請はできない点に注意が必要です。
対象者
こどもエコすまい支援事業の対象となるのは下記の方です。
- 申請時点において18歳未満の子どもがいる世帯
- 申請時点において夫婦であり、夫婦のどちらかが39歳以下の世帯
補助額
こどもエコすまい支援事業では、下記の金額を補助します。
- 注文住宅の新築または新築分譲住宅の購入は、1住戸につき100万円
- リフォームは、補助対象工事および工事発注者の属性等に応じて5万円から60万円
なお、新築分譲住宅の購入にあたっては、購入する物件が完成から1年以内であり、人が住んだことが無い物件であることが条件です。
申請の流れ
こどもエコすまい支援事業を利用するための申請は、住宅を取得したり、改修したりする消費者が行うのではなく、住宅を販売したり、工事を実施したりする事業者が行う必要があります。事業者は、交付申請期限までに事業者登録を行い、申請を行わなければなりません。
申請期限
令和5年度については2023年3月31日から、予算の上限に達するまでが申請期限です。予算の上限に達していない場合でも、遅くとも2013年12月31日には締め切られる可能性があります。
ZEH補助金
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、家庭でのエネルギー消費を太陽光発電システムなどで作るエネルギーによって補うことで、エネルギー消費を実質的にゼロにする家を指します。ZEH補助金は、そういった省エネ性能が高い住宅を建てたり、建売住宅を買ったりするときに、一定額を補助する制度です。
対象物件
ZEH補助金の対象となる物件は下記のとおりです。
- 申請者が住み続ける家であること
- ZEHまたはZEH+の交付要件を満たす住宅であること
- 住むための家であること(店舗等が付属している場合は別途条件あり)
- 賃貸や集合住宅ではないこと(ただし申請者が所有主かつ、そこに住むなら可能)
- 人の手に渡ったことの無い住宅であること
- 土砂災害特別警戒区域の外にある物件であること
詳細はZEH支援事業の公募要領に記載されています。申請を予定している場合は、目を通しておくと良いでしょう。
参考:一般社団法人 環境共創イニシアチブ ZEH支援事業公募要領
https://sii.or.jp/moe_zeh05/uploads/R05ZEH_moe_kouboyouryou_kojin_first.pdf
対象要件
ZEH補助金にはいくつかの種類があり、それぞれ補助額が異なります。基本的には、より環境に優しい設備を導入し、省エネルギーに配慮した物件であるほど多くの補助を受けられるようになっています。
ZEH支援事業(ZEH・ZEH+)
ZEH支援事業は「ZEH」と「ZEH+」の2種類の区分に分かれています。どちらも、住宅を建てたり、購入したりするときに補助金を受け取れる制度です。
- ZEH
ZEH区分で補助金を受けるためには、ZEHの定義を満たした物件であり、かつZEHビルダー、ZEHプランナーが建築や設計、販売をする住宅でなければなりません。
- ZEH+
ZEH+区分では、ZEHよりもさらに省エネルギーな住宅でなければなりません。具体的には、省エネ基準から一次エネルギー消費量を25%以上削減できる物件であること、電気自動車を活用し、充放電設備を備えていることなどの条件が加わります。
補助額
それぞれの区分で補助される金額は下記のとおりです。
区分 | 補助額 |
ZEH | 1戸あたり55万円 |
ZEH+ | 1戸あたり100万円 |
また、特定のシステムを導入する場合は補助金額が追加されます。
補助対象 | 追加補助額 |
蓄電システムを導入する場合 | 2万円/kWh |
CLT(直交集成板)を導入 | 90万円/戸 |
液体式PVTシステムを導入する場合 | 65万円もしくは80万円/戸 |
空気式PVTシステムを導入する場合 | 90万円/戸 |
液体集熱式太陽熱利用システムを導入する場合 | 12万円もしくは15万円/戸 |
申請の流れ
ZEH支援事業の補助金を受け取るためには、次のような流れで申請を行います。申請は、家を買ったり立てたりする本人が行うのではなく、事業者が代行して行います。
申請期限
ZEH支援事業の一般公募は、一次公募が2023年4月28日〜11月10日までです。
二次公募がある場合は、2023年11月20日〜2024年1月9日まで行われる予定です。
次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業
次世代ZEH+実証事業は、新しく家を建てる、もしくは購入する個人のための補助事業です。次世代ZEH+実証事業による補助金を受けるためには、ZEH+の要件を満たした上で、さらに下記の設備のいずれか1つ以上を導入する必要があります。
- 蓄電システム
- V2H充電設備(充放電設備)
- 燃料電池
- 太陽熱利用温水システム
- 太陽光発電システム10kW以上
補助額
1戸あたり100万円の補助に加え、導入設備によって最大75万円の補助金が追加されます。
申請の流れ
次世代ZEH+実証事業の公募期間は、一次公募が2023年4月28日〜11月10日までとなっています。申請は先着順で、申請する住宅に関与するZEHビルダーまたはプランナーが行います。
申請期限
補助を受けるためには、事業者による事前申請が必要です。事前申請は2023年4月17日〜2023年9月29日までです。
次世代HEMS実証事業
次世代HEMS実証事業は、新しく家を建てる個人のための補助事業です。次世代HEMS実証事業の補助金を受け取るためには、下記の条件を満たす必要があります。
- ZEH+の要件を満たした上で、高度エネルギーマネジメントを選択する
- 蓄電システムまたはV2H充電設備(充放電設備)を導入する
- 太陽光発電システムを導入し、AI・IoT技術などによる最適制御を行う仕組みを備えている
補助額
1戸あたり112万円の補助に加え、導入設備によって最大75万円の補助金が追加されます。
申請の流れ
次世代HEMS実証事業の申請は、他の補助金と異なり、申請の前にHEMSメーカーと申請する住宅に関与するZEHビルダーまたはプランナーがコンソーシアムを組んだうえで、提案応募を行うことが必要です。
申請期限
提案応募の期間は2023年4月17日〜2023年7月28日までとなっています。
地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は、省エネ性能に優れた木造住宅の整備を支援することを目的とした事業です。地域の工務店や木材関連事業者などがグループを組んで、この活動に取り組んでいます。
補助金は、このグループに所属している施工会社によって作られた住宅に対して支払われるもので、基本的には施工会社が建築主に代わって申請を行います。補助金は施工会社の口座に支払われますが、補助を受けた費用については建築主に還元しなければならない決まりになっています。
地域型住宅グリーン化事業の補助対象となる住宅には、下記の3種類が存在します。
- 長寿命型(認定長期優良住宅)
- ゼロ・エネルギー住宅型
- 高度省エネ型
以下でそれぞれ具体的に解説していきます。
長寿命型(認定長期優良住宅)
長寿命型(認定長期優良住宅)は、長期優良住宅の認定を受けた家を新しく建てる場合に、最大110万円が補助される制度です。さらに、長期優良住宅かつZEH水準を満たしている場合は、最大で140万円を受け取れます。
対象物件
長寿命型(認定長期優良住宅)の制度を利用するためには、物件が長期優良住宅に認定されなければなりません。長期優良住宅とは、大きく分けて下記の5つの措置が講じられている住宅を指します。
- 家を長く使うための構造と設備を備えている
- 居住環境等ヘの配慮がある
- ある程度の広さがある家
- 維持保全の期間と方法を定めている
- 自然災害への配慮がある
これらの対策をすべて講じており、必要書類を添えて所管行政庁に申請することで、長期優良住宅に認定されるケースがあります。
補助額
補助金額は下記のとおりです。
- 長期優良住宅に認定されている場合は最大110万円
- 長期優良住宅に認定されており、かつZEH水準を満たしている場合は最大140万円
申請の流れ
長寿命型(長期優良住宅)の補助金の申請は、グループに属している施工事業者が行います。
申請期限
一次募集はグループが採択された日から2023年11月20日までです。
二次募集は2023年12月前半から先着順で開始されます。
ゼロ・エネルギー住宅型(ZEH住宅)
ゼロ・エネルギー住宅型(ZEH住宅)は、ZEH基準を満たす新築物件に対して補助金が支払われます。ZEH基準またはNearly ZEH基準を満たしている場合は最大で140万円、さらに認定長期優良住宅の場合は10万円が上乗せされ、最大150万円の補助を受けられます。
対象物件
建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)に基づいてZEH、またはNearlyZEH、ZEH Orientedに認定された新築物件
補助額
補助金額は下記のとおりです。
- ZEH Orientedの場合、最大90万円
- ZEHあるいはNearly ZEHの場合、最大140万円
- ZEHあるいはNearly ZEHかつ認定長期優良住宅の場合、最大150万円
申請の流れ
補助金の申請は、グループに属している施工事業者が行います。
申請期限
一次募集はグループが採択された日から2023年11月20日までです。
二次募集は2023年12月前半から先着順で開始されます。
高度省エネ型(認定低炭素住宅)
国土交通省が定める「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づいた認定低炭素住宅を新築する場合に、補助金が支払われます。
対象物件
認定低炭素住宅、またはZEH基準をみたした認定低炭素住宅
補助額
補助される金額は下記のとおりです。
- 認定低炭素住宅の場合、最大70万円
- 認定低炭素住宅かつZEH水準を満たしている場合、最大90万円
さらにZEHの場合、加算措置による補助金追加を受けられます。
申請の流れ
補助金の申請は、グループに属している施工事業者が行います。
申請期限
一次募集はグループが採択された日から2023年11月20日までです。
二次募集は2023年12月前半から先着順で開始されます。
加算措置あり
特定の条件を満たしている場合、一定額を上乗せした補助金を受け取れます。これを加算措置と呼びます。
加算措置の具体的な内訳としては、下記のとおりです。
- 高齢者等配慮対策等級3以上のバリアフリー対策を講じる(バリアフリー加算)
- 主要構造材の50%以上を地域材にする(地域材加算)
- 主要構造材の100%を地域材にする(地域材加算)
- 瓦屋根やふすま・障子などの要素を取り入れる(地域住文化加算)
- 玄関・浴室・キッチン・トイレのいずれか2つ以上を複数設置(三世代同居加算)
これらの基準をいずれか、または複数満たすことで、補助金額が追加されます。
LCCM住宅整備推進事業
LCCMは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナスの略で、ZEHよりもさらに脱炭素化した住宅を指します。建設時や取り壊し時においても省CO2に取り組むと同時に、太陽光発電などを併せて活用することで、ライフサイクルを一貫してCO2の削減を目指す事業です。
新築一戸建て購入で適用される税金の軽減措置
新築一戸建てを購入する場合には、さまざまな税金の軽減措置を受けられます。具体的な金額や期間については、都道府県や申請者の状況、住宅が長期優良住宅かどうかなどによって異なります。
住宅ローン減税
住宅ローン減税は、新築住宅で13年間、中古住宅で10年間の間、所得税が年末時点の借入残高に対して0.7%減税される制度です。所得税から減税できないときは住民税から減税されます。減税を受けるためには確定申告が必要です。
住宅取得資金等の贈与税の軽減
省エネに配慮した住宅の場合、住宅取得資金などの贈与が最大1,000万円非課税になります。一般的な住宅の場合でも500万円までの贈与が非課税になります。ただし、贈与を受けるのは子どもか孫であることが条件です。
不動産取得税の軽減
不動産取得税は、家を買ったり、建てたり、または譲られるなどで不動産を得た場合に課税される税金です。
新築住宅の場合、不動産取得税が建物部分の固定資産税評価額から1,200万円控除されます。都道府県によっては環境に配慮した家を取得する場合に不動産取得税が減免される場合もあります。たとえば、東京都では「東京ゼロエミ住宅」事業を行っており、一定の要件を満たす住宅を新築した場合に不動産取得税が最大で全額免除されます。
登録免許税の軽減
登録免許税は、不動産を登記する際に、登記を希望する人が国に払う税金です。長期優良住宅、認定低炭素住宅を新しく建てる場合には、令和6年3月31日まで登録免許税が0.1%に軽減されます。
固定資産税の軽減
家を新築する場合には、固定資産税額が3年度分にわたり1/2に軽減されます。また、長期優良住宅を新築する場合には、固定資産税額が5年度分にわたり1/2に軽減されます。
この措置を受けるためには、家の所有者が自ら市町村などに申請を行う必要があります。
各自治体で利用できる新築一戸建て購入の補助金制度
新築一戸建てを購入する際には、各都道府県が用意している補助金制度を利用できます。都道府県ごとにさまざまな制度を用意しているため、利用条件に該当するかどうかは個別に確認が必要です。
東京都:東京ゼロエミ住宅
東京ゼロエミ住宅は、高断熱・省エネなどを取り入れ、人や地球環境に優しい住宅を建築した人に、東京都から助成金が支払われる制度です。条件により最大で210万円の支援を受けられ、不動産取得税の減免措置を受けることもできます。
大阪府:大阪市新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度
はじめて住宅を取得する新婚世帯・子育て世帯を対象に、住宅ローンの利子の一部を大阪市が補助する制度です。年間で最大10万円、最長5年間の補助を受けられます。
福岡県:ふくおか県産材家づくり推進助成制度
福岡県産の木材を活用した家を新築する、または購入する方に予算の範囲内で補助金が交付される制度です。一定の基準を満たした場合に、新築の建築費用の10%が補助されます。また、中古住宅の場合でも購入価格の10%の補助を受けられます。
埼玉県熊谷市:スマートハウス補助金
太陽光発電システムや蓄電システム、エネファームなど地球に優しい設備を備えた家を新築、または購入するときに、その費用を補助する制度です。
熊谷市の居住者で、物件に対象となる設備が導入されている場合に、最大10万円の補助を受けられます。
まとめ
本稿では、新築で家を建てたり、購入したりした際に受けられる補助金制度について解説しました。どの補助制度も、基本的には地球環境に優しい家を建てたり、購入したりすることが補助を受ける条件となっています。
このことからも、地球環境に優しく、省エネに力を入れた住宅を建てることは、これからの時代のスタンダードになるといえそうです。
補助金制度には予算と期限が定められています。募集締め切り期限に達しなくとも、申請額が予算に達し次第終了となるケースもあるため、利用を考えている場合は早めの申請が必要です。